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何十億の命より

1.例えば今日目の前に神様が現れて
  願いを一つ叶えてくれるというのなら
  僕が望むのは世界の平和なんかじゃなく
  あのコが泣きやんでくれることだけ
  この世から戦争がなくなって
  みんなが幸せになったって
  あのコが悲しい目にあってたら
  僕には何の意味もない
  見知らぬ国の見知らぬ人の何十億の命より
  僕にとって大切なのは
  かけがえのないたった一人のあのコの方だから

2.例えば今日目の前に神様が現れて
  世界を救えと僕に命令したとしても
  僕にできるのは
  親愛なるたった一人の人を
  精一杯守り通すことだけ
  どれだけたくさんの人がいて
  僕を好きだと言ってくれたって
  もしもあのコがいなくなったら
  世界なんて滅んでもいい
  見知らぬ国の見知らぬ人の何十億の涙より
  僕にとって耐え難いのは
  かけがえのないたった一人のあのコを失うことだから

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冬のセミ

 

1  戦争のない平和な国で
   飢えのない豊かな国で
   僕達は笑いながら
   敵を求めてさまよい続ける
    
   明日が来ることにおびえ
   夜通し歩きとおした果てに
   たどり着くのはいつものコンビニエンスストア
    
   ささやかなつながりを求めて
   スイッチを入れたインターネットには
   無価値な情報があふれ
   携帯電話に縛り付けられたまま
   大切なことを見落としていく

   幸せなつもりで
   大事なことは何も知らされず
   見えない何かに囲まれて
   息をするたびに身体をむしばまれ
   物を食べるたびに命を削られ
   気づいたときにはもう手遅れ
   それでもそれが運命だったと信じてる

   そんな僕達の足元では
   名もない花がひっそりと
   僕達より一足先に
   枯れ果てていった

   これは誰が望んだことなのだろう
   この先には一体何があるのだろう

   夜の街をつんざいて
   冬のセミが鳴く
   お前達はもう終わりだと
   冬のセミが鳴く


 2 季節のない乾いた国で
   夜のない狂った街で
   僕達はしらけたふりをしながら
   何かを探し続ける

   馬鹿げた宗教が
   次から次へと出てきて
   若者たちを連れ去っていく
   理由がわからないと
   大人達は嘆く

   赤ん坊を焼き殺して
   捕まった少年が
   群衆の前でVサインを出した
   理由がわからないと
   ニュースキャスターは嘆く

   本当にわからないのかい?

   クスリに溺れ
   酒に溺れ
   セックスに溺れ
   お約束のコース
   結局何も残らない
 
   間抜けな中年をもてあそんで
   わずかな金を手にしては
   むなしさを買い集める少女たち
   いつか気がつくのかい?
   もてあそばれいていたのは
   自分だったことに

   いい学校へ行って
   いい会社に入って
   家庭を持って
   マイホームを買って
   それが幸せだと
   どんな馬鹿でももう信じはしない

   あんた達がさんざん見せてくれたから
   あんた達のようには
   死んでもなりたくないから

   これが神様の意思だったのだろうか
   この世界に何か意味があったのだろうか

   喧騒の街をつんざいて
   冬のセミが鳴く
   幕が降りるときが来たと
   冬のセミが鳴く

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all written by tamaranzaka

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